
今回指導したのは、ピッチャーとして通常の投球動作で投げることが難しくなっていた選手です。
投球フォームを確認すると、前脚が着地したあとに身体の動きが一度止まり、そこから腕を振って投げる状態になっていました。
この状態に対して、
「肘を上げる」
「膝が割れないようにする」
といった見た目のフォームだけを修正しても、根本的な改善にはつながりません。
そこで初回は、なぜ着地後に身体が止まり、腕だけで投げる状態になっているのかを身体機能と動作の両面から確認しました。
身体を固めて投げている
身体の動きを確認していくと、一つの問題として見られたのが、身体の後面を固めて動いていることでした。
投球では身体が回転していく中で、身体の後面も伸ばされながら動いていきます。
しかし今回は、十分に伸ばされる前に身体を固めてしまうため、動きが途中で止まりやすくなっていました。
そこで、
「自分で伸ばす」のではなく「動きによって自然に伸ばされる」
という感覚を作るところから始めました。
腕の動きを身体につなげ、身体の後面から脚、さらに足部まで動きが伝わるようにしていきます。
右脚で身体を支えられない
エクササイズを進めていく中で、もう一つ大きな問題が見つかりました。
右脚で身体を十分に支えられていないことです。
本人に確認すると、以前から右足の小指側のアーチがほとんどない感覚があるとのことでした。
実際の動作でも右足部で身体を支えきれず、反対側へ身体を逃がすような動きが見られました。
投球では大きな力を生み出すだけでなく、その力を身体で受け止めながら次の動きへつなげる必要があります。
右脚・右足部の支持機能については、今後さらに改善していく必要があります。
胸郭と下半身を分けて動かせない
さらに確認したのが胸郭の動きです。
投球では下半身が先行して動きながら、上半身との間に動きの差が生まれます。
しかし今回は、胸郭と下半身を分けて動かすための可動域が不足していました。
その状態で、
「身体を開かないようにする」
ことだけを意識すると、身体全体を固めたり、別の部分で動きを作ったりする可能性があります。
そこで今回は、開かないように抑えるのではなく、まず胸郭そのものが動ける状態を作ることを優先しました。
いきなり通常のフォームには戻さない
身体機能を確認したあと、投球動作の再学習を行いました。
ここで通常のピッチングフォームをそのまま修正することはしていません。
まず腕の位置を下げ、さらに正面を向いた状態から投げることで動作を簡単にしました。
そこで作り直したのが、
ステップ
↓
着地
↓
身体が動く
↓
腕が出てくる
という流れです。
難しい動作の中で悪い部分を一つずつ直すのではなく、まずスムーズに投げられる条件を作り、その動きを身体に覚え直してもらうことを優先しました。
着地後の「間」が減少
最初は腕を下げた位置からスタートしましたが、徐々に腕の位置を上げていきました。
最終的には、正面向きであれば上からでも投げられるところまで変化しました。
特に大きかったのが、着地してから腕を振るまでにあった「間」が減ったことです。
最初は、
着地する
↓
身体が止まる
↓
腕で投げる
という動きでした。
それが、
ステップ
↓
着地
↓
身体の動きから腕が出てくる
という流れへ変化してきました。
本人もこの違いを感じられるところまで初回で進めることができました。
横向きに戻すと右脚の問題が再び出る
正面向きからはかなり投げられるようになったため、通常のピッチングに近い横向きからの動きも確認しました。
しかし、横向きからスタートすると右軸足に余計な動きが再び現れました。
そのため、初回では無理に通常のフォームまで戻していません。
まずは、
正面向きからスムーズに投げられる動きを繰り返すこと
を優先します。
そこで動作を定着させながら、右脚・右足部の支持機能や胸郭の動きを改善し、徐々に横向きからの投球へ移行していきます。
「フォームを直す」だけでは改善しないことがある
投球フォームを見ると、
「肘が低い」
「膝が割れている」
「身体が開いている」
など、目に見える部分が気になります。
しかし、その形になっている理由が別のところにある場合、見えている部分だけを直そうとしても改善しないことがあります。
今回も初回で優先したのは、フォームの形を整えることではありません。
身体を固めずに動けること
右脚で身体を支えられること
胸郭と下半身を分けて動かせること
着地から腕まで動きを止めずにつなげること
そして、
「投げられないフォームを直す」のではなく、「投げられる動きから作り直す」
という考え方です。
初回では正面向きから投げられるところまで改善しました。
ここから動きを定着させ、身体機能の改善と並行しながら、通常のピッチングへ戻していきます。